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留学経験者の声

アメリカ東海岸での研究生活。 Yale University School of Medicine, Section of Digestive Diseases/Liver Center 田中正剛

2015年4月から3年5ヶ月の間、イェール大学医学部消化器・肝臓センターの岩切泰子准教授の研究室に留学する機会に恵まれましたので、その時の体験を述べたいと思います。

イェール大学について
イェール大学は1701年設立のアメリカで3番目に歴史の古い大学で、アイビーリーグに属する全米屈指の大学です。医学部も200年以上の歴史を持ち、2018年度にアメリカ国立衛生研究所(NIH)から獲得した研究費は4億ドル以上に上り、全米のメディカルスクールの中で第7位にランクインしています。イェール大学のあるコネチカット州ニューヘイブンはちょうどマンハッタンとボストンの中間地点に位置しており、どちらの都市も車で2時間の距離です。緯度は函館とほぼ同じで、夏はクーラーを付けなくても過ごせるほど快適ですが、冬には気温が-20℃まで下がったり、一晩で30cmほど積雪することもあります。私のようにMD、PhDで博士研究員としてイェールに留学する人の数は年々減少しているようで、近年は20人前後です。それに対して中国からの留学生は年々増加しており、感覚的にはイェールに居るアジア系の8割が中国人、1割が韓国人で日本人の存在感は残念ながら希薄です。中国から来た大学院生の話では、博士課程3年間の内、2年間を海外で研究することが主流で、政府が公的なフェローシップによって毎年1,000人程度をサポートする仕組みになっているそうで、中国人留学生が増加している一因だと思われます。

アメリカでの研究生活
ボスの岩切先生の専門は血管生理学であり、岩切研究室では主に肝線維化及び門脈圧亢進症の病態を血管生理学の観点から研究しています。私は大学院での研究の終盤に、肝硬変モデルにおける間質液・リンパ液産生が増加する現象に興味を持っていましたが、岩切研究室でちょうど肝内リンパ管についての研究がスタートしたとのことで、博士研究員として受け入れて頂けることとなりました。私が参加した当初、岩切研究室はボスを含めて6人と比較的小規模なラボでしたが、ここ数年でメンバーは増えていき、現在は日本人3人を含めて13人と倍増し、更にラボが活性化しているようです。留学中には肝内リンパ管新生の興味深い新規メカニズムを発見し、また肝内リンパ管に関する総説を2本発表することができ、とても充実した研究生活を送ることができました。

私生活の方はというと、渡米後数か月は慣れない英語を用いて仕事と生活のセットアップをする必要があるので体力的にも精神的にもハードな日々ですが、その後は徐々にアメリカでの生活を楽しむ余裕が出てきます。アメリカ人はフランクな人が多く、他人の子供も積極的にかわいがる雰囲気があり、子連れで街を歩いていると見知らぬ人が子供にも親にもきさくに話しかけて来ますし、レストランのウェイター・ウェイトレスも陽気で楽しい人が多いです。日本に住んでいれば長期休暇を取って海外旅行をしないと行けない場所に、少し足を延ばせば行けることも楽しみの一つでしょう。

留学を終えて
アメリカには研究者としてステップアップしようという人達が全世界から集まって来て、その中から成果を上げた優秀な研究者がアメリカに定住してラボを構えるというシステムが確立しています。彼らのようなエネルギーに満ち溢れた人達と接することにより、私の研究に対する姿勢もよりアグレッシブに変化した気がします。今から研究を始める若い人達には、チャンスがあれば是非研究留学にチャレンジしてもらいたいと思います。

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